株式会社リミブレイクの佐々木優です。
ねえ、君は、自分の足元にある地面が、音もなく消えてなくなる感覚って、味わったことある?
去年の夏だったかな。蒸し暑い夜で、オフィスには私一人。安物のコーヒーを啜りながら、ぼんやりと新しいAIのデモ画面を見ていたんです。ありきたりな質問を打ち込むと、画面には、淀みなく、美しく、完璧な「答え」が表示された。その瞬間、ゾッとした。恐怖じゃない。なんだろう、高層ビルの屋上から、手すり無しで下を覗き込んだ時みたいな、めまい。
私が10年かけて積み上げてきた「情報を探し、まとめ、分かりやすく伝える」っていうスキルの大部分が、ほんの数秒で、この無機質な箱に代替されていく光景。それが、私の足元の地面が消えた瞬間でした。
君たちは、そんな、地図が燃やされ、コンパスが狂った世界に、社会人として第一歩を踏み出そうとしている。
正直に言う。羨ましいなんて、綺麗事は言わない。大変な時代に生まれてきたな、って思う。でも、同時に、心の底からこうも思うんです。
「ああ、なんて面白い時代なんだろう」って。
今日は、そんな、ルールがぐちゃぐちゃに壊れた世界で、君が「君だけのゲーム」をどう創っていくか。その話をします。綺麗事も、建前も、全部なしで。
「正解」がゴミになった日。
昔はね、情報を知っていることが価値でした。誰も知らない情報源を掘り当ててきて、「こんなデータがあります!」ってドヤ顔で上司に報告するのが、デキる若手の仕事だった。
でも、もう終わり。完全に、終わった。
Googleの検索窓に何か打ち込んでみて。一番上に、AIが生成したそれっぽい「答え」が出てくるでしょう? AIO(AI Overview)とかいう、アレ。多くの人は、もうそこで満足してしまう。わざわざ、どこかの会社の、誰が書いたかも分からない記事をクリックしようなんて思わない。ゼロクリック検索。言葉通り、クリックすらされない。私たちの声は、届く前にかき消される。
これは、ただウェブサイトへのアクセスが減る、なんていう生易しい話じゃない。
君や、君の会社が、この世界に「存在しない」ことにされてしまう、という話です。
AIが作る「世界の要約」の中に、君の名前も、君の会社の名前も出てこない。誰も君のことを見つけられない。まるで、最初からそこにいなかったかのように。
笑えないでしょう? 私も笑えない。必死にウェブサイトを作って、ブログを更新して…その努力が、AIという巨大な壁の向こう側に、誰にも見られずに積み上がっていくかもしれないんだから。
じゃあ、どうするの? 諦める?
冗談じゃない。
壁があるなら、よじ登るか、回り込むか、風穴を開けるしかない。そして、その風穴の開け方が、昔とは全く違うってことなんです。
SEO?ああ、それね。…魂、入ってる?
「これからはLLMOの時代だ!」とか息巻いてるコンサルタント、最近よく見かけます。LLMO(大規模言語モデル最適化)。要は、AIに好かれるように自分を最適化しましょうね、って話。

SEOの次はLLMO!AIに好かれるのも大事だけど、私はちゃんと魂を込めて書きたいな。
間違っちゃいない。でも、言葉が軽すぎる。私はこの「最適化」って言葉が、どうにも好きになれないんです。なんだか、AI様のご機嫌を伺う、ただの媚びへつらいみたいで。
私たちがやるべきことは、そんな「最適化」なんていうお行儀のいいものじゃない。
AIが、無視したくても、無視できないほどの「ノイズ」になること。
AIの作った綺麗な要約の世界観を、ぐちゃぐちゃに破壊するほどの「熱量」をぶち込むこと。
これしかないと、私は本気で思っています。

AIの世界をぶち壊すくらいの熱量、ゆりも共感しちゃう!無視できないノイズになっちゃお!
昔ながらのSEO対策…キーワードを詰め込んで、他のサイトから文章を借りてきて、体裁を整えて…。そんな魂の抜けたコンテンツは、AIにとって最高の「エサ」です。美味しく要約されて、骨の髄までしゃぶられて、引用元として名前すら載らずに捨てられる。
そうじゃない。君にしか書けない、君にしか語れない、
君自身の「何か」はどこにある?
AIは、体験ができない。失敗して、泣きたくなる夜を過ごすこともない。理不尽な上司に怒られて、トイレで一人、拳を握りしめることもない。顧客からの「ありがとう」の一言に、天にも昇る気持ちになることもない。
その、どうしようもなく人間臭い、泥臭い、君だけの「感情の揺らぎ」。それこそが、AIには絶対に生成できない、君だけの価値なんです。小手先のSEOやLLMOなんて、その価値をAIに届けるための「手段」にすぎない。手段を目的化する人間は、いつの時代も、一番最初に淘汰される。
私が、ただの「佐々木さん」から「リミブレイクの佐々木代表」になれた理由。
少し、私の昔話をさせてください。
会社を立ち上げて数年、本当に仕事がなかった。実績もない、コネもない、ただ情熱だけはある、青臭い会社。毎日毎日ブログを書いて、業界のニュースを解説して、自分たちの考えを発信し続けた。でも、誰にも読まれなかった。マジで、誰にも。アクセス解析の画面を見て、溜息をつく毎日。
ある日、心が折れかけて、もうブログなんてやめようかと思ったんです。その時、ふと気づいた。「私、誰の真似してるんだろう」って。有名な経営者や、人気ブロガーの書き方を無意識に真似て、当たり障りのない、どこかで読んだことあるような文章を書いていたんです。
恥ずかしくて、悔しくて、腹が立った。自分自身に。
その夜、全部捨ててやろうと思って、初めて自分の言葉で書いたんです。成功体験じゃない。大失敗したプロジェクトの話。クライアントにこっぴどく怒られて、契約を切られて、チームが崩壊しかけた、思い出したくもないくらい惨めな話。
でも、そこから何を学んだか。どうやって立ち直ろうともがいているか。その、カッコ悪い、生々しい、剥き出しの過程を、全部書いた。
翌朝、その記事に、初めて一件のコメントがつきました。
「すごく正直で、心を打たれました」
って。
あの時の、心臓が鷲掴みにされるような感覚、今でも忘れられません。
あれが、私の会社の「エンティティ(実体)」が生まれた瞬間でした。
「すごい実績のある会社」じゃない。「失敗から学んで、正直にもがいている会社」という、唯一無二の存在として、初めて世界に認識された瞬間。
君にだって、必ずあるはずです。君だけの体験、君だけの失敗、君だけの譲れないこだわり。(E-E-A-T)なんて横文字で考えるから難しくなる。要は、
「お前は、自分の人生をちゃんと生きてるか?」
ってこと。君が本当に体験し、専門性を磨こうともがき、その道のプロとして譲れない一線を持って、嘘偽りなく語っているか。
それを、自分の言葉で、世界に発信するんです。それが、君という人間の「実体」になる。誰にも真似できない、一次情報になる。最初はたった一人にしか届かないかもしれない。いいんです、それで。その一人が、やがて二人になり、十人になる。その小さな熱の伝播こそが、AIの作った無機質な世界に、人間が起こせる唯一のバグなんです。
テクニックの話なんて、本当は最後でいい。
…と、ここまで熱く語っておいてなんだけど、一応、具体的な話もしておきますか(笑)。
AIは文章を「段落(パッセージ)」単位で評価するから、一つ一つの段落で意味が完結するように書くといい、とか。AIに自己紹介するための「LLM.txt」っていう新しい仕組みが始まったよ、とか。
大事ですよ。もちろん、大事。でもね、これらは、あくまで枝葉の話。
料理に例えるなら、最高の食材(君の体験)と、それを調理する情熱(君の想い)があれば、あとは塩コショウ(テクニック)を振るだけで、人の心を動かす一皿は作れるんです。最高のテクニックを駆使しても、肝心の食材が偽物で、想いがこもっていなければ、それはただの、味気ないエサにしかならない。
だから、お願いだから、テクニックに溺れないで。本質を見失わないで。
君は、何色の炎を燃やす?
長々と、偉そうに語ってしまいました。ごめんなさい。
でも、これだけは、心の底から信じているんです。
地図が燃えて、誰もが道に迷っている今だからこそ、君が、君自身の足で、新しい道を作れる。
正解がなくなった今だからこそ、君が、君だけの
「これが私の正解だ」
を、世界に叩きつけられる。
これから君を待っているのは、退屈な作業じゃない。AIに指示を出すだけの仕事でもない。
君という「ブランド」を、この世界にどう打ち立てるかという、壮大なクリエイティブです。
クリックされるな。アクセス数を稼ぐな。そんなものは、もう古い。
検索される人間になれ。君の名前で、ググられる人間になれ。
AIが作った便利な世界。それを使い倒すのは、大いに結構。でも、
決して、AIに「使われる」人間になるな。
君がこの世界に踏み出す、その一歩。それが、新しい地図の、最初の足跡になる。
ようこそ、混沌へ。
さあ、君は何を燃やす?
株式会社リミブレイク 代表取締役社長 佐々木 優