Google AIモードは本当にデフォルト化するのか? 情報の錯綜から学ぶ、経営者の視点と対応策

こんにちは、佐々木 優です。IT企業を経営している立場から、今日はとても重要で、そして少し複雑なお話をさせていただきたいと思います。

先日、海外のSEOメディア「Search Engine Roundtable」や「Search Engine Land」で報じられたニュースを見て、正直困惑しました。Google検索が「AIモード」を間もなくデフォルト化するという報道があったのですが、その後すぐにGoogle幹部からの修正発言があったんです。この一連の出来事は、私たちIT業界で働く者にとって、情報の真偽を見極めることの重要性を改めて感じさせる出来事でした。

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発言とその修正 – 情報が錯綜した24時間

この騒動の発端は、2025年9月6日午前7時2分、GoogleのAI製品担当主任プロダクトマネージャーであるLogan Kilpatrick氏がX(旧Twitter)で発言したことでした。彼は「AI Modeが間もなくデフォルトになる」という趣旨の投稿をし、さらにユーザーからの質問に対して「soon :)」(間もなく)と笑顔の絵文字付きで返答したんです。

私も最初にこのニュースを見たとき、「ついにその時が来たか」と思いました。会社のSlackでも社員たちが「これは大変なことになりそうですね」「対策を急がないと」と話していたのを覚えています。

ところが、翌日の9月7日、Google検索の製品担当副社長(VP)であるRobby Stein氏が同じくXで「wouldn’t read too much into this. we’re focusing on making it easy to access AI Mode for those who want it」(これをあまり深読みしないでください。私たちはAIモードを使いたい人が簡単にアクセスできるようにすることに焦点を当てています)と発言したんです。

この修正発言を見たとき、私は「ああ、やっぱり」と思いました。企業のプロダクトマネージャーレベルの発言と、VP(副社長)レベルの発言では重みが違います。おそらくKilpatrick氏の発言は個人的な見解で、会社の正式な方針ではなかったのでしょう。

実際に、BleepingComputerの報道によると、現在のところGoogleはAIモードを全員のデフォルトにする計画はないそうです。ただし、AIモードを好む人が個人的にデフォルトとして設定できるトグル機能やボタンの提供は検討されているとのことです。

Googleのビジネスモデルへの影響 – 慎重に進む理由

なぜGoogleがAIモードのデフォルト化に慎重なのか、経営者の視点から考えてみたいと思います。

皆さんもご存知の通り、Googleの主要な収益源は広告収入です。私たちがGoogle検索を使って何かを調べるとき、検索結果に表示される広告をクリックすることで、Googleは収益を得ています。

でも、現在のAIモードやChatGPTのようなAI検索では、従来型の広告がほとんど表示されていません。私も実際に試してみましたが、確かに広告らしい広告は見当たりませんでした。

ただし、最近の動きを見ると、GoogleはすでにAIオーバービューでの広告テストを開始しており、広告パートナーに対してAI広告の実践方法を提案しているそうです。つまり、収益化の方法を模索している段階なんですね。

BleepingComputerの記事では「GoogleはAIモードが広告ビジネスにどのような影響を与えるかをまだ見極めようとしている」と分析されています。これは非常に的確な指摘だと思います。

私の会社でも、クライアント企業から「AIが主流になったら広告戦略はどう変わるのか」という相談を受けることが増えています。正直に言うと、私たちもまだ完全な答えを持っているわけではありません。でも、この変化が段階的に進むことで、私たち企業側も対応する時間ができると考えています。

日本でのAI機能展開 – 想像以上に進んでいる現状

日本でのAI機能の展開について、私が調べた限りでは想像以上に進んでいることがわかりました。

まず、AIオーバービューについてですが、これはすでに2024年8月に日本に導入されており、日本語でも利用可能です。2024年10月にはさらに100カ国以上に拡大され、現在では英語、ヒンディー語、インドネシア語、日本語、ポルトガル語、スペイン語の6言語に対応しています。

さらに興味深いことに、日本の検索マーケティング専門家である鈴木謙一氏の報告によると、Google AIモードは公式には英語のみのサポートとされているにも関わらず、実際には日本語、ドイツ語などでも応答できることが確認されているそうです。これは「隠れた機能」として静かにテストされている可能性があります。

私も試しに英語設定でAIモードを使ってみましたが、確かに日本語での質問にも応答してくれました。この機能は公式には発表されていませんが、多言語サポートの準備が着々と進んでいることを示しています。

2025年5月時点で、AIオーバービューは200カ国以上、40言語以上で利用可能になっており、毎月10億人以上のユーザーが利用しているという規模です。

LLM時代に企業が本当にすべきAI対策 – 変わらない本質

今回の一連の騒動を通じて、改めて感じたことがあります。それは「情報に踊らされずに、本質を見極めることの大切さ」です。

先月、日本で初めて開催されたSEOカンファレンスに参加した際、SEO歴20年から30年というベテランの第一人者の方々が口を揃えて言っていたことがあります。

「AI対策のために全く新しいことをする必要はない。これまでのSEO対策をより一層強化していくことが重要だ」

この言葉は、今回の騒動を経てより深く理解できました。技術は急速に進歩していますが、ユーザーの課題を解決し、価値を提供するという根本的な部分は変わりません。

私の会社では、この経験を踏まえて以下のような方針を立てています:

1. 信頼性の高い情報源となることを目指す AIが参照したくなるような、深い洞察や独自の視点を含んだコンテンツ作りに力を入れています。表面的な情報ではなく、人間だからこそ提供できる価値を追求しています。

2. 複雑な課題解決により焦点を当てる AIが簡単に回答できないような複雑な課題や、人間の感情に寄り添った解決策を提供することに注力しています。

3. 専門性と権威性の継続的な向上 特定の分野における専門性を高め、その分野のエキスパートとして認識されるよう努めています。これは従来のSEOでも重要でしたが、AI時代にはさらに重要になると感じています。

4. 情報の真偽を見極める力の強化 今回のような情報の錯綜に対応するため、複数のソースから情報を収集し、慎重に判断する体制を整えています。

変化の波を読む力 – 経営者として学んだこと

Google AIモードのデフォルト化について、現在のところは「ユーザーが選択できるオプション」として提供される方向性が見えてきました。

2025年中にAIモードが完全にデフォルトになる可能性は低くなりましたが、2026年には状況が変わる可能性もあります。重要なのは、この変化を一喜一憂するのではなく、長期的な視点で捉えることです。

私が経営者として学んだことの一つは、「変化のスピードを正確に読むことの重要性」です。早すぎる対応は資源の無駄遣いになりますし、遅すぎる対応は競争劣位を招きます。

今回の件でも、もしKilpatrick氏の最初の発言だけを信じて急激な戦略変更をしていたら、混乱を招いていたでしょう。Stein氏の修正発言を待って、慎重に判断したことで、適切な対応ができました。

私の会社では、週に一度の「AI動向ミーティング」に加えて、「情報の信頼性チェック」という新しいプロセスを導入しました。重要な情報については、複数のソースで確認し、公式発表を待つという姿勢を徹底しています。

現場で感じた変化と未来への準備

実際のところ、AIオーバービューが日本で展開されてから、クライアント企業のWebサイトへの流入パターンに変化が見え始めています。

ただし、これは終わりではなく始まりです。GoogleのMartin Splitt氏が2025年6月のGoogle Search Central Liveイベントで語ったところによると、ユーザーの多くはAIオーバービューの上部3分の1程度しか読まず、スクロール深度の中央値は30%程度だそうです。

これは何を意味するかというと、AIが提供する情報だけでは満足できないユーザーが一定数存在するということです。より詳細な情報や、人間ならではの視点を求めて、元のWebサイトを訪問するユーザーは今後も存在し続けるでしょう。

先日、ある製造業のクライアント企業の担当者の方から「佐々木さんの会社は、この変化をどう見ているんですか?」と相談を受けました。その方は本当に心配そうな表情をされていました。

私はこうお答えしました。「変化は確実に起きています。でも、それは突然の崖から落ちるような変化ではなく、階段を一段ずつ上るような変化です。私たちには準備する時間があります」

情報リテラシーの重要性 – 今回の教訓

今回の一件で最も強く感じたのは、情報リテラシーの重要性です。

Logan Kilpatrick氏の発言は確かにインパクトがありましたが、その後のRobby Stein氏の修正発言まで含めて全体像を把握することで、より正確な状況理解ができました。

Search Engine Landの記事では、この修正発言について「Maybe not(そうでもないかも)」というタイトルで報じています。こうした慎重な報道姿勢も、私たちが見習うべき点だと思います。

私たちIT業界で働く者は、技術の最前線にいるからこそ、情報の精査により注意深くならなければいけません。特に、クライアント企業に対してアドバイスをする立場にある私たちは、正確で バランスの取れた情報を提供する責任があります。

今回の経験を通じて、私は社内の情報共有プロセスを見直しました。重要な業界ニュースについては、必ず複数のソースを確認し、公式発表や修正情報がないかを48時間は注視するという ルールを設けました。

未来への展望と心構え

Google AIモードの完全なデフォルト化は、当面先送りされる可能性が高くなりました。しかし、AI検索がWebの主流になっていく流れは変わりません。

重要なのは、この変化を恐れるのではなく、準備の時間として活用することです。GoogleがAIモードの収益化モデルを模索している間に、私たちは質の高いコンテンツ作りと、ユーザー体験の向上により一層注力できます。

実際に、GoogleはすでにAIモードやAIオーバービューでの広告テストを進めており、広告パートナーに対してAI広告の実践方法を提案しています。これは、将来的にはAI検索でも収益化の道筋が見えてくることを示しています。

私たちが今すべきことは、この変化の過程を注意深く観察し、適切なタイミングで適切な対応を取ることです。焦って間違った方向に進むよりも、確実な情報に基づいて行動することの方がずっと重要です。

最後に – 共に歩む仲間として

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今回のGoogle AIモードを巡る騒動は、私たちにとって貴重な学習機会でした。情報の真偽を見極める重要性、慌てずに全体像を把握する大切さ、そして変化に対する適切な心構えについて、改めて考えさせられました。

もし皆さんの会社でも、AI対応について悩んでいることがあれば、ぜひ信頼できる専門家や同業者と情報を共有することをお勧めします。一人で悩むよりも、同じ課題を抱える仲間と一緒に解決策を考えていく方が、きっと良い結果につながります。

この激動の時代を、私たちは一歩ずつ、着実に歩んでいきましょう。変化を恐れず、でも慌てることなく、本質を見失わずに前進していけば、必ず道は開けると信じています。

皆さんと一緒に、この時代の変化を乗り越えていけることを心から願っています。

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