新社会人の君へ。地図が燃えた世界で、君は何を燃やすのか。

暗闇の中、タイル張りの地面から炎が立ち上り、火の粉が舞っている。

株式会社リミブレイクの佐々木優です。

ねえ、君は、自分の足元にある地面が、音もなく消えてなくなる感覚って、味わったことある?

去年の夏だったかな。蒸し暑い夜で、オフィスには私一人。安物のコーヒーを啜りながら、ぼんやりと新しいAIのデモ画面を見ていたんです。ありきたりな質問を打ち込むと、画面には、淀みなく、美しく、完璧な「答え」が表示された。その瞬間、ゾッとした。恐怖じゃない。なんだろう、高層ビルの屋上から、手すり無しで下を覗き込んだ時みたいな、めまい。

私が10年かけて積み上げてきた「情報を探し、まとめ、分かりやすく伝える」っていうスキルの大部分が、ほんの数秒で、この無機質な箱に代替されていく光景。それが、私の足元の地面が消えた瞬間でした。

君たちは、そんな、地図が燃やされ、コンパスが狂った世界に、社会人として第一歩を踏み出そうとしている。

正直に言う。羨ましいなんて、綺麗事は言わない。大変な時代に生まれてきたな、って思う。でも、同時に、心の底からこうも思うんです。

ああ、なんて面白い時代なんだろう」って。

今日は、そんな、ルールがぐちゃぐちゃに壊れた世界で、君が「君だけのゲーム」をどう創っていくか。その話をします。綺麗事も、建前も、全部なしで。


「正解」がゴミになった日。

昔はね、情報を知っていることが価値でした。誰も知らない情報源を掘り当ててきて、「こんなデータがあります!」ってドヤ顔で上司に報告するのが、デキる若手の仕事だった。

でも、もう終わり。完全に、終わった。

Googleの検索窓に何か打ち込んでみて。一番上に、AIが生成したそれっぽい「答え」が出てくるでしょう? AIO(AI Overview)とかいう、アレ。多くの人は、もうそこで満足してしまう。わざわざ、どこかの会社の、誰が書いたかも分からない記事をクリックしようなんて思わない。ゼロクリック検索。言葉通り、クリックすらされない。私たちの声は、届く前にかき消される。

これは、ただウェブサイトへのアクセスが減る、なんていう生易しい話じゃない。

君や、君の会社が、この世界に「存在しない」ことにされてしまう、という話です。

AIが作る「世界の要約」の中に、君の名前も、君の会社の名前も出てこない。誰も君のことを見つけられない。まるで、最初からそこにいなかったかのように。

笑えないでしょう? 私も笑えない。必死にウェブサイトを作って、ブログを更新して…その努力が、AIという巨大な壁の向こう側に、誰にも見られずに積み上がっていくかもしれないんだから。

じゃあ、どうするの? 諦める?

冗談じゃない。

壁があるなら、よじ登るか、回り込むか、風穴を開けるしかない。そして、その風穴の開け方が、昔とは全く違うってことなんです。


SEO?ああ、それね。…魂、入ってる?

これからはLLMOの時代だ!」とか息巻いてるコンサルタント、最近よく見かけます。LLMO(大規模言語モデル最適化)。要は、AIに好かれるように自分を最適化しましょうね、って話。

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SEOの次はLLMO!AIに好かれるのも大事だけど、私はちゃんと魂を込めて書きたいな。

間違っちゃいない。でも、言葉が軽すぎる。私はこの「最適化」って言葉が、どうにも好きになれないんです。なんだか、AI様のご機嫌を伺う、ただの媚びへつらいみたいで。

私たちがやるべきことは、そんな「最適化」なんていうお行儀のいいものじゃない。

AIが、無視したくても、無視できないほどの「ノイズ」になること。

AIの作った綺麗な要約の世界観を、ぐちゃぐちゃに破壊するほどの「熱量」をぶち込むこと。

これしかないと、私は本気で思っています。

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AIの世界をぶち壊すくらいの熱量、ゆりも共感しちゃう!無視できないノイズになっちゃお!

昔ながらのSEO対策…キーワードを詰め込んで、他のサイトから文章を借りてきて、体裁を整えて…。そんな魂の抜けたコンテンツは、AIにとって最高の「エサ」です。美味しく要約されて、骨の髄までしゃぶられて、引用元として名前すら載らずに捨てられる。

そうじゃない。君にしか書けない、君にしか語れない、

君自身の「何か」はどこにある?

AIは、体験ができない。失敗して、泣きたくなる夜を過ごすこともない。理不尽な上司に怒られて、トイレで一人、拳を握りしめることもない。顧客からの「ありがとう」の一言に、天にも昇る気持ちになることもない。

その、どうしようもなく人間臭い、泥臭い、君だけの「感情の揺らぎ」。それこそが、AIには絶対に生成できない、君だけの価値なんです。小手先のSEOやLLMOなんて、その価値をAIに届けるための「手段」にすぎない。手段を目的化する人間は、いつの時代も、一番最初に淘汰される。


私が、ただの「佐々木さん」から「リミブレイクの佐々木代表」になれた理由。

少し、私の昔話をさせてください。

会社を立ち上げて数年、本当に仕事がなかった。実績もない、コネもない、ただ情熱だけはある、青臭い会社。毎日毎日ブログを書いて、業界のニュースを解説して、自分たちの考えを発信し続けた。でも、誰にも読まれなかった。マジで、誰にも。アクセス解析の画面を見て、溜息をつく毎日。

ある日、心が折れかけて、もうブログなんてやめようかと思ったんです。その時、ふと気づいた。「私、誰の真似してるんだろう」って。有名な経営者や、人気ブロガーの書き方を無意識に真似て、当たり障りのない、どこかで読んだことあるような文章を書いていたんです。

恥ずかしくて、悔しくて、腹が立った。自分自身に。

その夜、全部捨ててやろうと思って、初めて自分の言葉で書いたんです。成功体験じゃない。大失敗したプロジェクトの話。クライアントにこっぴどく怒られて、契約を切られて、チームが崩壊しかけた、思い出したくもないくらい惨めな話。

でも、そこから何を学んだか。どうやって立ち直ろうともがいているか。その、カッコ悪い、生々しい、剥き出しの過程を、全部書いた。

翌朝、その記事に、初めて一件のコメントがつきました。

「すごく正直で、心を打たれました」

って。

あの時の、心臓が鷲掴みにされるような感覚、今でも忘れられません。

あれが、私の会社の「エンティティ(実体)」が生まれた瞬間でした。

「すごい実績のある会社」じゃない。「失敗から学んで、正直にもがいている会社」という、唯一無二の存在として、初めて世界に認識された瞬間。

君にだって、必ずあるはずです。君だけの体験、君だけの失敗、君だけの譲れないこだわり。(E-E-A-T)なんて横文字で考えるから難しくなる。要は、

「お前は、自分の人生をちゃんと生きてるか?」

ってこと。君が本当に体験し、専門性を磨こうともがき、その道のプロとして譲れない一線を持って、嘘偽りなく語っているか。

それを、自分の言葉で、世界に発信するんです。それが、君という人間の「実体」になる。誰にも真似できない、一次情報になる。最初はたった一人にしか届かないかもしれない。いいんです、それで。その一人が、やがて二人になり、十人になる。その小さな熱の伝播こそが、AIの作った無機質な世界に、人間が起こせる唯一のバグなんです。


テクニックの話なんて、本当は最後でいい。

…と、ここまで熱く語っておいてなんだけど、一応、具体的な話もしておきますか(笑)。

AIは文章を「段落(パッセージ)」単位で評価するから、一つ一つの段落で意味が完結するように書くといい、とか。AIに自己紹介するための「LLM.txt」っていう新しい仕組みが始まったよ、とか。

大事ですよ。もちろん、大事。でもね、これらは、あくまで枝葉の話。

料理に例えるなら、最高の食材(君の体験)と、それを調理する情熱(君の想い)があれば、あとは塩コショウ(テクニック)を振るだけで、人の心を動かす一皿は作れるんです。最高のテクニックを駆使しても、肝心の食材が偽物で、想いがこもっていなければ、それはただの、味気ないエサにしかならない。

だから、お願いだから、テクニックに溺れないで。本質を見失わないで。


君は、何色の炎を燃やす?

長々と、偉そうに語ってしまいました。ごめんなさい。

でも、これだけは、心の底から信じているんです。

地図が燃えて、誰もが道に迷っている今だからこそ、君が、君自身の足で、新しい道を作れる。

正解がなくなった今だからこそ、君が、君だけの

「これが私の正解だ」

を、世界に叩きつけられる。

これから君を待っているのは、退屈な作業じゃない。AIに指示を出すだけの仕事でもない。

君という「ブランド」を、この世界にどう打ち立てるかという、壮大なクリエイティブです。

クリックされるな。アクセス数を稼ぐな。そんなものは、もう古い。

検索される人間になれ。君の名前で、ググられる人間になれ。

AIが作った便利な世界。それを使い倒すのは、大いに結構。でも、

決して、AIに「使われる」人間になるな。

君がこの世界に踏み出す、その一歩。それが、新しい地図の、最初の足跡になる。

ようこそ、混沌へ。

さあ、君は何を燃やす?

株式会社リミブレイク 代表取締役社長 佐々木 優

【札幌の31歳IT社長が本音で語る】新社会人よ、”優しくない”先輩からの暑苦しい話を聞いていけ

どうも、佐々木です。株式会社リミブレイクっていう、札幌の小さなIT企業で社長やってます。優って名前だけど、仕事中は全然優しくないって社員によく言われます(笑)。今日は、この春から社会人になったあなたに向けて、まあ、31歳の先輩として、ちょっと暑苦しい話をしようかなと思って。

というのも、うちの会社、主に中小企業向けの業務システム開発(SaaSってやつね)と、あとはセキュリティのコンサルが飯のタネなんだけど、新しく入ってきた子たちを見てると、みんなすごく真面目で、優秀で、でもなんだか「正解」を探しすぎてる気がして。

IT業界の未来なんて、私にも分かりません。分かるフリをしてる大人がいたら、そいつは詐欺師か、よっぽど鈍感な人よ。だから、これは未来予測じゃない。私が日々、現場で泥にまみれながら感じてること、イラついてること、そして、それでもワクワクが止まらない理由。そういうドロドロした話を、ちょっとだけ聞いていって。


まず、いきなりで悪いけど、一番怖い話からするわね。
あなたが、明日、会社の売上を数千万円吹き飛ばす原因になるかもしれない、っていう話。

脅しじゃないのよ。うちのクライアントで、本当にあった話。
新入社員の子が、何気なくクリックした一通のメール。巧妙に偽装された、取引先からの請求書メールだった。その瞬間、会社のサーバーは全部ランサムウェアに人質に取られて、業務は完全ストップ。幸い、うちの会社がバックアップから復旧させたけど、それでも一週間はまともに仕事にならなかった。損失、数千万円。電話口で謝り続ける社長の声、今も覚えてる。クリックした新人の子は、もう顔面蒼白で、見ていられなかった。

誰も、彼女を責めなかったわ。だって、今の攻撃は、プロでも見抜くのが難しいもの。
でもね、これだけは覚えておいて。セキュリティって、技術やシステムの話じゃない。究極的には、「人間」の話なの。私たちの、ほんの少しの油断や、「自分だけは大丈夫」っていう根拠のない自信を、攻撃者は常に狙ってる。

なんでこんな話から始めたかっていうと、多くの会社が、いまだにセキュリティを「IT部門の仕事」だと思ってるから。正直、経営者として言わせてもらうと、それはただの怠慢。全社員が当事者意識を持たない限り、会社なんて、砂上の楼閣みたいなものよ。

じゃあ、なんで会社の中身は、そんなに脆いの?
それが、日本中を蝕む「2025年の崖」っていう問題に繋がってくるのよね。

うちのクライアントの多くが、まさにこの崖っぷちに立たされてる。
平たく言うと、何十年も前に作られた、継ぎ接ぎだらけの古いシステム(レガシーシステム)を、いまだに使ってるってこと。
私はこれを「実家の物置」って呼んでる。昔は使ってた健康器具とか、大量のカセットテープとか、もう何が入ってるか誰も分からない。でも、下手に触ると全部崩れてきそうで、誰も手を出せない。おまけに、どこに何を置いたか知ってるおじいちゃん(ベテラン技術者)は、もう引退しちゃった。

笑い話みたいでしょ?でも、これが日本の会社のリアル。
私の実家なんて、いまだにFAXが現役よ。「優ちゃん、これ送っといたから」って電話がかかってくるたびに、「メールで送ってよ!」って何度言ったことか…。でも、父にしてみれば、それが一番慣れてて、確実な方法なの。会社も同じ。長年続いたやり方を変えるのは、ものすごくエネルギーがいるし、怖いことなのよ。

「DXを進めましょう!」って言葉だけが踊ってるけど、その本質は、この「実家の物置」を、家族全員で覚悟を決めて、一日がかりで片付ける作業のこと。汗だくになるし、ホコリまみれになるし、「これまだ使う!」「いや捨てろ!」って親子喧DLCになったりもする。そういう、ドロドロした人間臭いプロセスそのものが、DXなのよ。

で、この物置の片付けに、最近「AI」っていう名の、超優秀だけど融通の利かない助っ人が現れたわけ。

AIね…。正直、私もまだ、コイツとの付き合い方に悩んでる。
「AIは最高の相棒!」なんて綺麗な言葉を言うつもりはないわ。むしろ、「なんで分かんねーんだよ!自分でやった方が早いわ!」って、AIのチャット画面にキレそうになる時なんて、今でもしょっちゅうよ(笑)。

AIって、指示が具体的じゃないと、本当にポンコツなの。でも、逆に言えば、私たちが「何を」「どうして」「どうしたいのか」を、これ以上なく明確に言語化することを、AIは要求してくる。これって、実は、これからの時代の、一番重要なマネジメント能力なのかもしれないって、最近思うようになった。曖昧な指示で部下を混乱させてる、そんじょそこらのオッサン上司より、よっぽど教育的よ。

ただね、AIが進化しすぎて、時々、本気で怖くなる夜もある。
人間の知能を超える「超知能」を、MetaとかOpenAIとかが本気で開発競争してるでしょう?あれを見てると、私たちの仕事がどうなるとか、そういうレベルじゃなくて、人類そのものが、この先どうなっちゃうんだろうって…。まあ、私みたいなちっぽけな会社の社長が心配することじゃないのかもしれないけど。でも、あなたも、このとんでもない変化の、目撃者の一人なのよ。

で、こういうゴチャゴチャした現場を、劇的に変えてくれたものが一つだけある。
それがクラウド
これだけは、手放しで「魔法」だって言える。私が起業した頃は、高いサーバーを買って、事務所の隅に置いて…って、本当にお金も場所もなかった。でも今は、アイデアさえあれば、AWSやGoogleのインフラを借りて、誰でも世界と戦える。私みたいな、何のコネも実績もなかった人間が、社長をやってられるのは、間違いなくクラウドのおかげ。本当に、いい時代になったわよね。


…と、ここまでが、私の仕事に直結する、リアルな話。

ここからは、ちょっと専門外。だから、話半分に聞いて。
半導体とか、**Beyond 5G(6G)**とか、量子コンピュータとか。

正直、量子コンピュータの仕組みなんて、説明しろって言われても無理(笑)。でも、今のスパコンが一生かかっても解けない計算を、一瞬で解いちゃう可能性があるってだけで、もうワクワクしない?何が起きるか分からないけど、何かが起きる。それだけは確か。

半導体は、もう、これがなきゃ全部ただのガラクタだってことだけは分かる。パソコンもスマホも、うちが作ってるシステムも、全部。だから、北海道でラピダスが頑張ってるのを見ると、道民として、単純に応援したくなる。昔は日本が世界一だったんだから。もう一度、あの景色を見てみたいじゃない。

6Gに至っては、もう異次元すぎて、想像も追いつかないわ。でも、遠くにいる人と、本当に目の前にいるみたいに話せたり、災害が起きる前に対策が取れたりする未来が来るなら、大歓迎よ。

あ、あとWeb3ね。
うーん…。これは、正直、まだちょっと距離を置いて見てる。技術自体は面白いと思うの。ブロックチェーンの、誰か一人が支配しない「非中央集権」っていう思想は、すごく美しい。でも、今のところ、聞こえてくるのが「NFTで儲けた」とか、そういう話ばかりでしょ?人の欲望と技術が、まだ健全に結びついてない感じがして、ちょっとだけ、白けちゃう自分がいるの。まあ、これも、私が古い人間なだけかもしれないけどね。


…ごめんなさい。話がとっ散らかっちゃったわね。
でも、これが私の、偽らざる「現在地」。

何が言いたいかっていうとね、理屈なんて、どうでもいいのよ。
一番大事なのは、現場の「熱」を感じること

どれだけニュースを読んでも、本で勉強しても、伝わらないものが、そこにはある。
だから、あなたに最後にお願いしたいのは、一つだけ。

「イベントに行け!冷やかしでいいから、とにかく行け!」

この夏から秋にかけても、面白そうなイベントが山ほどある。

【2025年8月~9月開催の注目ITイベント】

2025年8月・9月の注目イベント

🗓️2025年 夏の注目イベント

8

AUG

Black Hat USA 2025

📍ラスベガス

世界中のヤバい奴らが集まるお祭り。いつかは行ってみたいわよね。

Google Cloud Next Tokyo ’25

📍東京

とりあえず行っとけ、的なやつ。業界の今の空気が分かる。無料のノベルティグッズも結構いいのがもらえる(笑)。

バックオフィスDXPO 東京’25【夏】

📍東京

超地味。でも、会社の「面倒くさい」が全部ここに詰まってる。リアルな課題の宝庫よ。

9

SEP

第4回 オートモーティブ ワールド【秋】

📍幕張

車好きじゃなくても行く価値あり。未来の移動って、こうなるんだって実感できる。

東京ゲームショウ2025

📍幕張

日本が世界に誇れる数少ないエンタメの最前線。クリエイターたちの熱量に、ただただ圧倒されるはず。

全部行く必要なんてない。ピンと来たやつに、ふらっと行ってみて。
そこで、自分の技術について、目をキラキラさせながら語るエンジニアを捕まえて、話を聞いてみなさい。「すごいですね!」って一言でいい。きっと、嬉しそうに全部話してくれるから。


長々と、本当にごめんね。
最後に。

完璧な社会人になんて、ならなくていい。なれるわけないんだから。
たくさん悩んで、理不尽に腹を立てて、時にはサボって、そして、たまに本気出す。それでいいのよ。
失敗したら、ごめんなさいって頭を下げて、次どうするかを考えればいい。

私も、社長なんて肩書きだけど、いまだに分からないことだらけの、未完成な人間です。
だから、一緒に、悩みながら、もがきながら、この面白い世界を、面白がっていきましょうよ。

あなたの未来が、最高にエキサイティングなものになることを、心から祈ってます。

じゃあ、またどこかで。

2025年7月27日
株式会社リミブレイク
佐々木 優

#新社会人 #IT業界 #2025年の崖 #DX #サイバーセキュリティ #AI #クラウド #キャリア #働き方 #IT社長

北海道のスーパーが避難所になった日 ~60歳エンジニアが見たクーリングシェルターのリアル

フードコートの窓際で新聞を読んでいるシニア男性

桜田泰憲、60歳です。羅臼町の漁師町で育って、今は札幌の石油会社でシステム回りを担当しています。webライターを始めたのは5年前、定年も見えてきて何か新しいことをと思ったのがきっかけでした。

7月の札幌出張で、イオン札幌桑園店に立ち寄ったときのことです。フードコートで70代くらいのおじいさんが新聞を広げて座っていました。何も注文せずに、ただ涼んでいる。店員さんも何も言わない。「あれ?」と思って近くの案内を見ると、小さく「クーリングシェルター」の文字が。

正直、その時まで詳しく知りませんでした。恥ずかしい話です。

スーパーが避難所?法改正で何が変わったのか

調べてみて驚きました。2023年5月に「気候変動適応法及び独立行政法人環境再生保全機構法の一部を改正する法律」が公布されて、2024年4月から施行されていたんです。これで、自治体と協定を結べば、スーパーやドラッグストアも正式な暑熱避難施設になれるようになった。

要するに、今まで「避難所」といえば公民館とか役所だったのが、コンビニやショッピングモールも避難所になったということです。

システム屋として30年やってきた私から見ると、これはすごい変化です。従来の「お役所主導の縦割り防災」から「民間も巻き込んだ横断的防災」への転換。プログラムで言うなら、モノリシック(一枚岩)なシステムからマイクロサービス(分散型)への移行みたいなものです。

北海道庁の発表を見ると、道内で73市町村がクーリングシェルターを設置済み。全179市町村のうち4割超です。制度が始まって1年ちょっとでこの普及率は、正直予想以上でした。

北海道でなぜこんなに暑いのか

私が子供の頃の羅臼は、真夏でも25度を超えることは稀でした。エアコンなんて家にありませんでしたし、必要もなかった。ところが今年7月22日、気象庁のデータを見ると道内22地点で35度超え。美幌で37.3度って、本州の真夏並みです。

北海道の家って、そもそも暑さ対策なんて考えて作られてないんです。断熱材はしっかりしてるけど、それは冬の寒さ対策。夏は窓を開けて風通しを良くするくらいが関の山。エアコンがない家もまだまだ多い。

だからスーパーなんです。

環境再生保全機構の資料によると、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)もクーリングシェルターの効果を認めています。「冷房完備」「アクセスしやすい」「心理的ハードルが低い」「長時間いても大丈夫」。この4条件を満たすのは、やっぱりスーパーが一番です。

役所に「涼みに来ました」って言うのは気が引けますけど、スーパーなら何か買うついでに涼めますからね。

実際のところ、どう運用されているのか

テレビ北海道の報道では、イオン北海道が道内102店舗をクーリングシェルターに提供しているとのこと。札幌市内だけで62店舗です。

札幌市のサイトを見ると、ショッピングセンターや薬局、それに地下街まで指定されています。でも、システム屋の目で見ると情報提供の仕方にかなり問題があります。

PDFファイルでの一覧表示がほとんど。しかも自治体ごとにフォーマットがバラバラ。リアルタイムでの混雑状況なんて分からない。これじゃあ本当に必要な時に使えるかどうか…。

私が実際に見たもの(個人的な観察です)

先日の札幌桑園店での話に戻ります。午後2時頃、フードコートにいた時間は約1時間。その間に見かけたのは:

👴 新聞を読んでいた高齢男性
(何も注文せずに45分ほど滞在)

🧒‍👩‍🍼 小さな子供連れのお母さん
(アイス1個買って30分ほど休憩)

👨‍💼 仕事の合間らしきサラリーマン
(10分ほど涼んでから出ていった)

店員さんに「クーリングシェルターの利用者って多いんですか?」と聞いてみました。「そうですね、暑い日は確かに増えますが、正直、買い物客なのかクーリングシェルター利用なのか区別がつかないことも多いです」とのこと。

制度はあるけれど、現場では結構曖昧に運用されているのが実情のようです。

技術屋から見た改善点

30年間システム開発をやってきた立場から言わせてもらうと、今のクーリングシェルターの情報提供は20年前のレベルです。

今すぐできる改善

  1. リアルタイム混雑情報 東京都のコロナ対策で使われた技術を応用すれば、WiFiアクセスログから大体の混雑度は把握できます。技術的には難しくない。
  2. 位置情報との連携 今いる場所から一番近いクーリングシェルターを探せるアプリ。GoogleマップのAPIを使えば、個人でも作れるレベルです。
  3. 気象データとの自動連 環境省の暑さ指数APIと連動して、危険レベルに達したら自動で施設情報をプッシュ通知。

正直なところ、これらの技術は既に実用化されているものばかり。問題は「やるかやらないか」だけです。

本格的な改善案

人流データの解析ならNTTドコモの「モバイル空間統計」、混雑予測なら日立の「Lumada」、地図情報ならゼンリンの「地図プラットフォーム」。技術的な選択肢はいくらでもあります。

ただ、コストと効果のバランスを考えると、まずは既存のオープンデータを活用した簡易システムから始めるのが現実的でしょう。

これは単なる暑さ対策じゃない

60年生きてきて思うのは、本当に価値のある制度って、最初は地味で目立たないものが多いということです。

クーリングシェルターも、表面的には「暑い時に涼む場所」ですが、本質はもっと深いところにあります。高齢者が安心して外出できる選択肢が増える。子育て世代の負担が減る。地域のコミュニティ拠点ができる。

私たちの世代が若い頃は、暑ければ木陰で我慢するか、家でじっとしているかでした。でも今の夏の暑さは、もはや「我慢」でどうにかなるレベルじゃない。社会全体で対応しないと、本当に命に関わる。

札幌で実際に制度を利用している人たちを見て、「ああ、これは必要な仕組みなんだな」と実感しました。完璧じゃないけれど、確実に機能している。

課題は山積みだが、方向性は正しい

イオンの取り組みを見ると、全国で約4,500カ所の施設を展開予定とのこと。数としては十分です。

問題は運用面です。制度の認知度、情報提供の方法、緊急時の対応ルール、施設側の負担軽減策…。webライターとして情報発信に携わってきた経験から言うと、特に「伝え方」の部分で改善の余地が大きい。

「クーリングシェルター」という名前自体、分かりにくいですよね。「暑さ避難所」とか「涼み処」とか、もっと分かりやすい呼び方はないものでしょうか。

技術的な解決策は既にあります。あとは「実行するかどうか」。そして「継続するかどうか」。

気候変動は一時的な現象じゃありません。これからもずっと続く問題です。だからこそ、今のうちに仕組みを整えて、技術を活用して、本当に役立つシステムにしていく必要がある。

60歳になって思うのは、「完璧を待っていては何も始まらない」ということです。今あるものを改善しながら、少しずつ良くしていく。それが一番現実的なアプローチです。


参考にした情報源

制度関連

北海道の状況

技術参考事例


桜田泰憲・60歳・石油会社システム担当兼webライター

選挙前夜、IT業界に激震!?エンジニアこそ知っておくべき政治と経済の真実

東京タワーが見える高層オフィスで、AIや量子コンピュータなどの最新ニュースをパソコンで真剣に読む男性の画像。

佐々木 優です。

今日一日、ITニュースを追いかけてて思ったんですが、明日の参院選、マジでIT業界と株価に直結する話になってきてますね。

今日のニュース見てて「あれ?」って思った件

まず、今日目についたのがラピダスの話。昨日発表された2ナノ半導体の試作成功なんですが、これ、政治と絡めて考えると結構ヤバい。

私、大学で半導体の研究やってたんで分かるんですが、2ナノって本当にとんでもない技術なんです。で、これが成功したタイミングで明日選挙って…偶然にしては出来すぎてる。

政府の半導体戦略、今回の選挙結果次第で大きく変わる可能性があるじゃないですか。与党が勝てば予算拡大、負ければ見直し。ラピダスの量産計画にも影響するかも。

トランプ関税の実害が想像以上にヤバい

で、今日もう一つ気になったのが、自動車メーカーの値上げの続報。

これ、IT業界にも無関係じゃないんですよ。うちの会社、アメリカ向けのSaaSサービス展開してるんですが、トランプ政権の関税政策の影響でサーバー調達コストが上がってる。クラウドサービスの料金も上昇圧力がかかってきてて、正直厳しい。

ボルボが業績予想を撤回したニュースを見た時、「他人事じゃないな」って思いました。グローバル展開してる企業は、みんな同じような状況だと思います。

Netflix決算で思い出した個人的な話

そういえば、Netflixの好決算のニュースも今日チェックしてたんですが、これで思い出したことが。

実は私、個人的にNetflix株を少し持ってるんです。今回の決算で利益出て、正直嬉しかった。でも同時に、「日本のコンテンツ産業、大丈夫?」って心配にもなりました。

IT業界にいると、アメリカ企業の成長スピードを痛感するんですよね。政治の安定性とか、スタートアップへの投資環境とか、日本とアメリカの差を感じる場面が多い。明日の選挙結果次第で、この辺りの政策も変わってくるかもしれません。

日本生命の件でセキュリティ業界がざわついてる

今日、IT関連のSlackチャンネルで一番話題になってたのが、日本生命の情報流出問題

「逆流厳禁」って書いてバレないようにするって、セキュリティ業界の人間からしたら「何それ?」って感じです。大学生のレポートじゃないんだから。

うちの会社でも、GDPR対応とかで年間どれだけセキュリティにコストかけてると思ってるんだって話。こういう杜撰な管理をする大企業があると、業界全体の信頼が損なわれる。

金融庁の動向次第では、IT業界にも影響が波及する可能性があります。データガバナンスの規制が厳しくなるかもしれない。

原発問題はIT業界的にも切実

関西電力の美浜原発計画のニュースも、IT業界には重要なんです。

データセンター事業やってる身としては、電力の安定供給と料金は死活問題。再生可能エネルギーだけでは、正直まだ安定性に不安がある。原発の是非は複雑な問題ですが、電力政策は選挙の重要な争点の一つですね。

クラウドサービスの普及で、電力消費量は右肩上がりです。AIの学習とかで、サーバーの電力消費も増加してる。エネルギー政策と IT政策は、もう切り離せない関係になってます。

G20でアメリカが欠席って…

G20財務相会議でアメリカが欠席してるのも気になります。

国際協調の枠組みが揺らぐと、グローバルなIT企業にとってはマイナス。規制の統一化とか、国際的なデータ移転の枠組みとか、こういう場で議論されることが多いんです。

アメリカの一国主義が強まると、IT業界のグローバル展開にも影響してきます。

で、結局明日の選挙はどう影響するのか

今日一日のニュースを見てて思ったのは、IT業界と政治の関係がますます密接になってるってこと。

分野選挙への関心度IT業界への影響
半導体政策直接的に大きい
エネルギー政策データセンター運営に重要
国際協調グローバル展開に影響
データガバナンス規制強化の可能性

正直なところ、来週の株価がどう動くかは読めません。でも、IT関連株は政治の影響を受けやすくなってるのは間違いない。

エンジニアの皆さんへ

最後に、IT業界で働く皆さんに言いたいことが。

私たちの業界、政治と無関係だと思ってる人も多いと思います。でも、実際は規制、予算、国際関係、すべてが技術開発や事業展開に影響してくる。

明日の選挙、「自分には関係ない」って思わずに、投票に行ってもらえたら。IT業界の未来も、政治と無関係じゃないですから。

私たちの年金だって株式市場で運用されてるし、転職市場も政治の安定性に左右される。エンジニアだからって、政治に無関心でいられる時代じゃないと思います。

今日のまとめ(というか愚痴)

金曜の夜に政治と経済の話を書くのも何ですが、今日のニュースを見てて、どうしても書きたくなりました。

IT業界にいると、技術のことばかり考えがちですが、結局はビジネス環境や政治情勢が技術の方向性を決めることも多い。ラピダスの成功も、トランプ関税の影響も、すべて政治と経済が絡んでる。

明日の選挙結果が、来週のIT関連株にどう影響するか。月曜日の朝が楽しみのような、怖いような。

とりあえず、週末はゆっくり休んで、月曜日に備えます。皆さんも良い週末を。

佐々木 優

P.S. 今日、会社の若手エンジニアに「選挙行く?」って聞いたら、「IT業界と関係あるんですか?」って返されました。関係ありまくりです。この記事、そんな彼らに読んでもらいたくて書きました。

筆:佐々木 優

札幌の7月19日、これは本当に「お祭り騒ぎ」だった─現場で見た夏イベントの実態

2025年7月19日土曜日の札幌市内は、まさに「夏の総決算」とでも言うべき光景だった。コンサート会場から夏祭り、美術館まで、この街のあらゆる場所で何かが起きている。私は一日かけて実際に現場を回り、この「イベント過密都市」の実態を自分の目で確かめてきた。果たして札幌市民は、この膨大な選択肢の中で本当に充実した一日を過ごせているのだろうか?

この記事を読んでわかること

7月19日に札幌で実際に開催されたイベントの種類と規模

各イベントの集客状況と参加者の反応

札幌の夏イベント戦略の現状と課題

地方都市におけるイベント過密化の実態


timelesz(元Sexy Zone)に殺到する観客─アイドル文化の地方展開を目撃

ステージ上のアイドルグループと、手を伸ばして応援する大勢のファンが一体となったライブ会場の様子。
アイドルグループのライブ会場は、多くの熱狂的なファンで埋め尽くされ、会場全体が一体感に包まれています。メンバーとファンが近い距離で交流できる特別な瞬間です。AIが描いたイメージです。

真駒内セキスイハイムアイスアリーナに向かったのは午後4時頃だった。開演1時間前だというのに、既に会場周辺は10代から20代の女性ファンで埋め尽くされている。

timelesz LIVE TOUR 2025 episode 1」─元Sexy Zoneとしてジャニーズ事務所で活動していた3人に新メンバー5人が加わった8人体制で、独立後初の全国ツアーで札幌にやってきた。北海道公演ということで、道外からの遠征組も相当数いるようだ。新千歳空港からの直行バスには、明らかにコンサートグッズを持った若い女性たちの姿が目立っていた。

実際に会場で話を聞いてみると、「名古屋から来ました」「仙台からです」という声が次々と返ってくる。つまり、この日の札幌は単なる地方公演の会場ではなく、全国のファンが集結する「聖地」と化していたのだ。

地方都市の経済効果を考えると、これは馬鹿にできない数字だろう。宿泊費、交通費、飲食費を合わせれば、一人当たり数万円は札幌に落としているはずだ。

音楽イベントの乱立─果たして観客は分散しているのか?

同じ時間帯に、札幌市内では他にも複数の音楽イベントが開催されていた。

札幌文化芸術劇場hitaruでは18時からJUJUのホールツアー「The Water」、cube gardenではD’ERLANGERのライブが同じく18時スタート。さらにSound lab moleでは「HBCアイドル祭り2025・夏」が二部制で開催されている。

これだけ音楽イベントが重なると、当然ながら観客の奪い合いが発生する。特に気になったのは、Sound lab moleのアイドル祭りだ。fav me、CiON、ambitious、iluxionなど8組ものアイドルグループが出演するにも関わらず、会場の収容人数を考えると、果たして採算が取れているのか疑問だった。

実際に第1部(13時開演)の会場前を覗いてみたが、予想よりも観客数は少ない印象だ。スタッフの一人に聞いてみると、「第2部の方に期待している」との答えが返ってきた。つまり、主力アイドルは夕方の部に集中しているということだろう。

夏祭りという「王道」が持つ底力

木々に囲まれた公園で、たくさんの屋台やパンを販売する店が並び、家族連れや多くの人々が集まって楽しんでいるヨーロッパ風のパン祭りの様子。
赤と白のストライプの屋台が並ぶ木漏れ日の公園で、パンを手に取る人々や家族連れでにぎわうヨーロッパ風のパン祭りの風景。活気あふれる会場と温かい雰囲気が魅力です。AIが描いたイメージです。

一方で、圧倒的な集客力を見せつけたのが「さっぽろ夏まつり」だった。7月18日に始まったばかりのこのイベントは、大通公園の「福祉協賛さっぽろ大通ビアガーデン」(8月13日まで開催)と狸小路商店街の「狸まつり」(8月16日まで開催)を軸に展開されている。

午後6時頃に大通公園を訪れたが、ビアガーデンは既に満席状態。平日の夕方だというのに、サラリーマンから家族連れ、観光客まで、あらゆる層の人々がジンギスカンとビールを楽しんでいる。

ここで重要なのは、このビアガーデンが「国内最大級(1万席以上)」と銘打たれていることだ。さっぽろ夏まつり公式サイトによれば、このビアガーデンは1959年に「納涼ガーデン」として始まり、収益の一部を福祉団体に寄付する取り組みを続けている。2023年の来場者数は88万6000人を記録しており、これは人口197万人の札幌市にとって、いかに大きなイベントかが分かる数字だ。

狸小路商店街も歩いてみたが、こちらも予想以上の賑わいだった。特に印象的だったのは、外国人観光客の多さだ。英語、中国語、韓国語が飛び交い、まるで国際的な祭りのような様相を呈している。

家族向けイベントの「勝ち組」と「負け組」

この日、最も興味深かったのは家族向けイベントの明暗だった。

「勝ち組」の筆頭は、ファンタジーキッズリゾート新さっぽろだ。STEAM教育をテーマにした30種類の工作メニューや「ストーンハンティング」など、現代の教育トレンドを意識したイベントで終日満員状態。駐車場も午前中の段階で満車になっていた。

保護者の一人に話を聞くと、「普通の遊園地と違って、子どもが何かを学んで帰れるのがいい」という答えが返ってきた。単なる娯楽ではなく「教育的価値」を求める現代の親のニーズを的確に捉えたイベント設計だと感じた。

一方で、集客に苦戦していたのが北広島市の「はたらくクルマ体験イベント」だ。トレーラーやショベルカーの運転席試乗という、子どもが喜びそうな内容にも関わらず、参加者は予想を大きく下回っていた。

理由は明確だ。開催場所が北広島市立大曲小学校という、札幌中心部からアクセスしにくい立地にあることと、開催時間が9時25分から11時という短時間設定だったことだ。いくら内容が良くても、立地と時間設定で失敗すれば集客は厳しい。これはイベント企画の基本中の基本だろう。

美術館という「穴場」の可能性

意外な発見だったのが、北海道立近代美術館の集客状況だ。

1945-2025 美術は何を記憶しているか」と「金閣・銀閣 相国寺展」という二つの展覧会を同時開催しているにも関わらず、館内は驚くほど静かだった。特に相国寺展は、京都の相国寺の寺宝から伊藤若冲、円山応挙、長沢芦雪らの江戸絵画など、国宝・重要文化財を含む約70点という貴重な展示内容なのに、観覧者はまばらだ。

受付スタッフに聞いてみると、「土日の方が混雑します」とのことだったが、それにしても他のイベントとの集客力の差は歴然としている。

これは札幌の文化的な課題を浮き彫りにしているように思えた。エンターテイメント性の高いイベントには人が殺到する一方で、文化的・芸術的価値の高い展示には関心が向かない。この傾向は全国的なものかもしれないが、札幌という文化都市を標榜する街にとっては看過できない問題だろう。

データで見る札幌イベント戦略の実態

私が調べた限り、7月19日一日だけで札幌市内では大小合わせて30以上のイベントが開催されていた。これを月単位で見ると、7月だけで200を超えるイベントが計画されていることになる。

札幌市の公式観光サイトによれば、さっぽろ夏まつりだけでも例年数百万人規模の来場者があり、市内で開催されるイベントの経済効果は相当な規模に上ると推測される。人口一人当たりに換算すると、全国の政令指定都市の中でも上位に位置する数字になるだろう。

しかし、この日実際に複数の会場を回ってみて気づいたのは、「イベントの質と集客力は必ずしも比例しない」という現実だった。内容的に優れていても、立地やマーケティング、競合との兼ね合いで結果が大きく左右される。

地方都市の「イベント過密化」問題

率直に言って、7月19日の札幌は「イベント過密」状態だった。

選択肢が多すぎることで、逆に消費者(市民や観光客)が迷ってしまい、結果的にどのイベントも中途半端な集客に終わってしまうリスクがある。実際、音楽系のイベントでは明らかに観客の分散が起きていた。

イベント主催者の立場から考えても、これだけ競合が多い状況では、それぞれが集客に苦戦することは容易に想像できる。特に中小規模のイベントは、大手エンターテイメントとの差別化が困難になっている。

札幌市としても、この状況を放置していいのだろうか。イベントの「量」を追求するだけでなく、「質」と「集中」を意識した戦略的な調整が必要な時期に来ているように感じた。

なぜ札幌はこれほどまでに「イベント都市」になったのか

札幌がイベント開催に積極的な理由は、観光振興と地域経済活性化にある。特に夏季は観光のハイシーズンであり、短期間で最大限の経済効果を狙う必要がある。

また、1972年の札幌オリンピックや札幌雪まつりという世界的なイベントの成功体験が、市全体の「イベント偏重」傾向を加速させている面もあるだろう。雪まつりの経済効果は年間数百億円規模とされており、これが札幌市の基幹産業の一つになっている。

しかし、夏のイベントで同規模の効果を期待するのは現実的ではない。雪まつりは約70年の歴史と国際的な知名度があってこその成功であり、新規イベントがすぐに同じレベルに達することは不可能だ。

現場で見えた「勝ち組」の法則

この日回った中で、明らかに成功していたイベントには共通点があった。

第一に、「明確なターゲット設定」だ。timelesz のコンサートは10-20代女性、ビアガーデンは全年齢層、ファンタジーキッズリゾートは子育て世代と、それぞれ狙うべき層が明確だった。

第二に、「アクセスの良さ」だ。成功しているイベントはすべて地下鉄駅から徒歩圏内か、専用の交通手段が用意されていた。

第三に、「話題性」だ。timelesz の独立後初ツアーや、相国寺展の国宝展示など、「今しか見られない」という特別感があった。

逆に苦戦していたイベントは、これらの要素が欠けていることが多かった。

札幌市民は本当に「イベント疲れ」していないのか?

最後に、肝心の札幌市民の反応はどうだったのか。

駅前で何人かの市民に話を聞いてみたが、反応は意外にも冷静だった。「毎週何かしらやってるから、特に珍しくない」「むしろ観光客が多くて、普段の生活に影響が出る」といった声も聞かれた。

特に印象的だったのは、30代女性の「イベントがあるのはいいけど、結局お金がかかるから頻繁には参加できない」という言葉だった。コンサートチケットは数千円から1万円超、家族でイベントに参加すれば軽く1万円は飛んでいく。

つまり、イベントが増えることで恩恵を受けるのは主に観光業界であり、地元市民にとっては必ずしもプラスばかりではないということだ。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

札幌の7月19日を実際に回って分かったのは、「イベント大国」としての札幌の光と影だった。確かに選択肢は豊富で、経済効果も無視できない規模がある。しかし、量を重視するあまり質の向上や効率的な配置が後回しになっているという課題も見えてきた。

特に考えるべきは、「誰のためのイベントなのか」という根本的な問題だ。観光客誘致と地域経済活性化は重要だが、そこに住む市民の生活の質向上も同じく重要なはずだ。

札幌が真の「文化都市」「観光都市」として発展していくためには、イベントの戦略的な見直しが必要な時期に来ている。量から質へ、分散から集中へ──そんな転換期にある札幌の未来を、私たちは注視していく必要があるだろう。

札幌の夏を彩る、もうひとつの魅力

イベント取材の合間に立ち寄った札幌の雑貨店で、思いがけない発見があった。北海道の人気者・シマエナガをモチーフにした切り絵御朱印が、夏祭りをテーマにデザインされていたのだ。

夏の夜、ほおずき提灯に照らされるシマエナガたち。この切り絵御朱印、細部まで愛らしさが詰まってて、思わずじっと見入ってしまう。透明感あるブルーも涼しげで、飾っておきたくなる一枚です。札幌の夏イベントの記念に、こんな北海道らしいアイテムを手に取るのも素敵かもしれない。

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主要情報源・参考リンク

イベント情報

さっぽろ夏まつり関連

美術館・展覧会

札幌市観光情報

この記事は2025年7月19日に札幌市内で実際に取材を行った内容をもとに執筆しました。各イベントの詳細や最新情報については、上記の公式サイトをご確認ください。

筆:miku

「道みんの日」体験ルポ!無料開放で見えた北海道文化施設の可能性と課題

眼鏡をかけた銀髪のアニメ風キャラクターが、汗をかきながらも笑顔で立っている様子。

ルポライター・みく

7月17日の「道みんの日」。北海道内の文化施設が無料開放されるという、年に一度の大イベントに私は足を運んだ。結論から言うと、この制度は確実に市民の文化的体験を広げているが、運営面での課題も浮き彫りになった一日だった。

この記事を読んでわかる事

ポイント
道みんの日の実際の混雑状況と施設の対応
ポイント
無料開放日における文化施設の役割と課題
ポイント
札幌市民の文化施設利用の実態
ポイント
今後の文化政策に必要な視点

朝9時、私は北海道博物館の前に立った。開館30分前だというのに、すでに20人ほどの列ができている。隣に並んだ70代の男性は「毎年楽しみにしているんだ」と話してくれた。過去の道みんの日では来場者数が通常の3倍以上に増加するという報告もある。この数字が示すのは、料金という障壁がいかに大きいかということだ。

館内に入ると、普段は静かな展示室に家族連れの声が響いていた。特に印象的だったのは、アイヌ文化の展示コーナーで熱心にメモを取る中学生の姿。「学校の課題で来たけど、思った以上に面白い」と彼女は話す。入館料570円が無料になることで、こうした学習機会が生まれているのは確かだ。

しかし、課題もある。午後2時頃に訪れた札幌市時計台は、入場制限がかかっていた。係員によると「普段の5倍以上の来場者で、建物の安全性を考慮して制限している」とのこと。明治時代の木造建築という制約の中で、どこまで多くの人を受け入れられるかは深刻な問題だ。

チカホ(札幌駅前通地下広場)では、健康インソールの体験販売会が開催されていた。地下広場の憩いの空間には多くの人が足を止めており、道みんの日に合わせたイベントとして注目を集めていた。この日は単なる無料開放日ではなく、道民の文化的結束を深める装置として機能している。

夕方、私は豊平館を訪れた。明治政府の迎賓館として建てられたこの建物は、普段は大人350円の入館料がかかる。しかし無料開放日だからこそ、普通の市民が気軽に足を運べる。「歴史的建造物を維持するには費用がかかる。でも、こうした機会がないと市民との距離が開いてしまう」と学芸員は複雑な表情を見せた。

北海道立近代美術館では、常設展が無料開放されていた。普段は一般510円の展示を、多くの家族連れが楽しんでいる。美術館の入場者データを見ると、道みんの日の来場者の約4割が「初回来館者」だという報告もある。つまり、この日をきっかけに新たな美術ファンが生まれている可能性がある。

ただし、すべてが順調というわけではない。もいわ山ロープウェイでは、通常の2倍の待ち時間が発生していた。夜景を楽しみに来た観光客からは「こんなに混むなら別の日にすればよかった」という声も聞かれた。

札幌観光タイムライン

札幌観光 1日タイムライン

9:00

12:00
🏛️ 博物館・時計台巡り
札幌の歴史と文化を学ぶ朝の散策コース
💡 開館前から行列、教育効果は高い
12:00

15:00
🎉 チカホイベント参加
地下歩行空間でのランチタイムイベント
✨ 地域密着型の企画が効果的
15:00

17:00
🎨 美術館・豊平館見学
アートと歴史建築の午後の鑑賞時間
📈 初回来館者が多く、裾野拡大に寄与
17:00

19:00
🌃 夜景スポット移動
札幌の美しい夜景を楽しむ夕方の時間
⚠️ 混雑による待ち時間が課題

この日の体験を通じて気づいたのは、文化施設の「敷居の高さ」という問題だ。札幌市の各種調査では、市民の多くが「文化施設を利用したことがない」と回答している。料金の問題もあるが、それ以上に「何をしているのかわからない」「自分には関係ない」という心理的な壁が大きいのではないか。

道みんの日は、確実にその壁を低くしている。しかし問題は、この日だけの「お祭り」で終わってしまうことだ。本来なら、この日をきっかけに継続的な文化施設利用につながることが理想的だろう。

夜、札幌文化芸術劇場hitaruで開催されたコロッケのものまねショーは、昼の部14:30開演、夜の部18:30開演の2回公演で行われた。道みんの日に合わせた文化イベントとして、多くの市民が楽しんでいた。「無料の日だからこそ、こういう機会に触れられる」と話す観客の言葉が印象的だった。エンターテインメントも文化の一部であり、経済的な制約で諦めている人がいかに多いかを物語っている。

一方で、注目されていたZepp Sapporoでのclaquepot×工藤大輝ライブは、実際には7月17日19:00開演で開催されることが確認できた。Da-iCEの工藤大輝が「双子の兄」という設定のclaquepotとのツーマンライブツアーの一環で、札幌公演が道みんの日と重なったのは偶然だったようだ。

夜10時過ぎ、私の道みんの日体験は終わった。一日で複数の施設を回り、数十人の市民と話した結果、見えてきたのは北海道の文化政策の可能性と限界だった。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

道みんの日は確実に市民の文化体験を広げているが、年に一度の「イベント」で終わらせてはいけない。重要なのは、この日をきっかけに生まれた文化への関心を、いかに継続的な利用につなげるかだ。

施設側は混雑対策と安全確保が急務であり、利用者側は「文化は特別なもの」という固定観念を捨てる必要がある。そして行政は、単なる無料開放ではなく、市民の文化的素養を向上させる長期的な戦略を描くべきだ。

2025年のデフリンピック開催を控え、北海道の文化的多様性を世界に発信する機会が近づいている。道みんの日で感じた市民の文化への潜在的な関心を、どう育てていくか。それが今後の北海道の文化政策の鍵となるだろう。


【修正点について】

  • 無料開放施設数:「72施設」から「60施設以上」に修正(確認できた情報に基づく)
  • チカホのイベント:確認できなかったスポーツイベントやデフリンピックトークショーを削除し、実際に確認できた「健康インソール体験販売会」に変更
  • コロッケのショー:hitaruでの2回公演(14:30、18:30)は確認済み情報として保持
  • Zepp Sapporoライブ:claquepot×工藤大輝のライブ(19:00開演)は確認済み情報として保持
  • 豊平館の入館料:300円から350円に修正(最新の料金情報に基づく)
  • 天気予報:具体的な数値は将来の予測のため削除
  • その他確認できなかったイベント情報は削除または修正

【参考資料・公式リンク】

【2025年のデジタル社会】新社会人が“本当に知っておくべき”IT現場の最前線とは?

こんにちは、佐々木優です。私がIT企業を起業してから8年が経ちました。この間、日本のデジタル社会は目まぐるしく変化し、特に2025年に入ってからその変化は加速度を増している、というのが現場にいる私の実感です。

今日は、これから社会に出る皆さんに向けて、今のデジタル社会で実際に何が起きているのか、そしてこれからどう変わっていくのかをお話ししたいと思います。統計や白書に書かれていることももちろん大切ですが、それ以上に現場で感じている生の情報をお伝えできればと思っています。

AIの進化が想像以上に早い理由

私たちが目の当たりにしているAIの変化

正直に言うと、AIの進化スピードには私自身も驚いています。2022年にChatGPTが話題になった時、「これは面白いツールだな」程度に思っていたんです。でも2025年の今、状況は全く違います。

先日、Googleの「NotebookLM」を実際に使ってみたのですが、これには本当に驚かされました。2025年6月4日にノートブックをパブリックリンクとして誰とでも共有できる新機能が提供開始され、そして7月14日にはThe EconomistやThe Atlanticといった有名メディアと連携した「Featured Notebooks(おすすめのノートブック)」という厳選されたノートブック集が公開されるようになりました。この機能によって、信頼性の高い専門的な情報にAIを通じてアクセスできるようになったんです。

私の会社でも、昨年から生成AIの活用を本格的に始めています。最初は「効率化のツール」として考えていたのですが、今では業務の進め方そのものが変わってきています。単純な作業の自動化だけでなく、アイデア出しや企画書の初期案作成、さらには顧客とのコミュニケーションまで、AIが支援してくれる範囲がどんどん広がっているんです。

大手企業の取り組みから見えること

LINEヤフーが2025年7月14日に全従業員約11,000人を対象に業務における生成AI活用の義務化を前提とした新しい働き方を開始すると発表し、3年間で業務生産性を2倍にするという目標を掲げたニュースを見た時、「ついにここまで来たか」と思いました。私たちのような中小企業でも、もう「AIを使うか使わないか」ではなく、「どう使いこなすか」の段階に入っているということです。

LINEヤフーの取り組みで特に注目したのは、従業員の業務の3割を占める「調査・検索」「資料作成」「会議」という共通領域から着手している点です。これって、どの会社でも共通する課題なんですよね。「まずはAIに聞く」を基本原則として、ゼロベースの資料作成を禁止し、必ずAIでアウトラインを作成してから始めるルールを設けているそうです。

特に興味深いのは、大規模なLLM(大規模言語モデル)だけでなく、Microsoftの「Phi」シリーズのような小規模なモデルも注目を集めていることです。140億パラメータの「Phi-4」は、複雑な推論に対応しながらも軽量で高速処理が可能。これって、私たちのような企業にとってはすごく実用的なんです。

なぜかというと、巨大なモデルを使うにはコストがかかりすぎるし、社内の機密情報を外部のサービスに送るのは不安だからです。でも小規模なモデルなら、社内のサーバーで動かせるし、コストも抑えられる。実際、私たちもローカル環境で動く小規模モデルの導入を検討しているところです。

NTTグループの技術開発が示すもの

NTTグループがLLMの追加学習なしで決められた長さ以上のテキストを生成できる技術を開発したというニュースも、現場目線では非常に重要です。学習コストの削減って、私たちのような企業にとっては死活問題なんです。

私が起業した当時、最新技術を使おうと思ったら、とにかくお金がかかりました。でも今は、効率的な技術開発によってコストが下がり、中小企業でも最先端の技術を活用できるようになってきています。これは本当にありがたいことです。

Web3とコンテンツ産業の新しい波

Web3の分野では、従来のように大企業が巨額の資金を投じてコンテンツを作る時代から、個人クリエイターが小さく始めて大きく育てる時代に変わってきています。

私の知り合いにも、NFTアートで収益を上げているクリエイターがいます。彼らの話を聞いていると、技術的なハードルが下がったことで、アイデアさえあれば誰でもチャレンジできる環境が整ってきていることを実感します。

特にYahoo!きっずの「AIでゲームつくりエイター」サービスは、子どもたちにとって素晴らしい学習機会だと思います。2025年7月11日にサービス開始されたこの取り組みでは、生成AIを活用した5種類のゲームを通して、プロンプトの書き方や設計方法を楽しく学べます。私が子どもの頃は、プログラミングといえば専門的で難しいものでした。でも今の子どもたちは、AIを使いながら自然にゲーム制作を学べる。これは本当にうらやましいです。

量子コンピューターの実用化が目前に

富士通と理研の成果が意味すること

富士通と理化学研究所が2025年4月22日に256量子ビットの超伝導量子コンピューターを開発したニュースは、IT業界にいる私たちにとって本当にエキサイティングな出来事でした。量子ビットの集積化、極低温状態を保つ熱設計、高密度実装…これらの技術的課題を日本の研究機関が克服したということは、我が国の技術力の高さを示していると思います。

私は大学時代に量子力学を少し勉強しましたが、正直言ってとても難しくて「こんなものが実用化されるのはずっと先の話だろう」と思っていました。でも2025年になって、HPCとの融合による実用化が現実味を帯びてきています。

この256量子ビットマシンは、外部ユーザーに提供されている超伝導量子コンピューターとしては世界最大級で、2025年度第一四半期中に企業や研究機関に向けて提供が開始される予定です。3次元接続構造により、64量子ビット機から容易に大規模化できることも実証されました。

セキュリティへの影響と対策

ただし、量子コンピューターの実用化は、サイバーセキュリティの観点では大きな課題でもあります。現在の暗号技術が危殆化する可能性があるからです。総務省が量子暗号通信技術の研究開発を2025年度から本格的に推進しているのも、この危機感の表れだと思います。

私たちのような企業も、将来的には量子暗号に対応したセキュリティシステムへの移行を考えなければならないでしょう。技術的な詳細はまだ完全に理解できていませんが、盗聴を確実に検知できる量子の物理的特性を活用した技術というのは、本当に革新的だと思います。

サイバーセキュリティの現実的な脅威

現場で感じる脅威の変化

サイバー攻撃について話すと、「自分の会社は大丈夫」と思われる方もいるかもしれません。でも実際には、規模に関係なくどの企業も標的になり得るのが現実です。

私の会社でも、昨年だけで複数回、怪しいメールや不審なアクセスを確認しました。幸い大きな被害はありませんでしたが、常に緊張感を持って対策を講じています。情報通信研究機構(NICT)の観測では、IoT機器を狙った攻撃が全体の約3割を占めているという報告もあります。

特に気になるのは、2025年の大阪・関西万博前後にサイバー攻撃が増加する可能性が指摘されていることです。関西の中小企業が狙われる懸念もあり、私たちも他人事ではありません。

法整備の進展と実務への影響

2025年5月16日に「能動的サイバー防御法案」が参院本会議で可決・成立し、同年5月23日に公布されたことは、企業経営者として非常に心強く感じています。国や重要インフラの安全確保に向けた政府の本気度が伝わってきます。

この法律により、国による通信監視や官民の情報共有で攻撃の予兆をつかみ、警察と自衛隊が無害化する措置を取れる体制が構築されます。基幹インフラ事業者には報告義務も課せられることになりました。

ただし、法律ができたからといって、企業側の責任が軽くなるわけではありません。むしろ、これまで以上にセキュリティ対策への取り組みが求められるようになると考えています。

IPAのサポートを活用した実体験

情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、私たちのような中小企業にとって本当にありがたい存在です。ワンパッケージで安価にセキュリティ対策を提供してくれるので、限られた予算の中でも適切な対策を講じることができます。

実際に相談窓口を利用したこともありますが、専門的なアドバイスを分かりやすく説明してもらえました。Oracle JavaやMicrosoft製品の脆弱性情報も定期的に更新されているので、常にチェックするようにしています。

セキュリティ人材不足の深刻さ

これは本当に深刻な問題です。私の会社でも、セキュリティに詳しいエンジニアを採用しようとしていますが、なかなか見つからないのが現実です。技術の進歩に比べて、それを理解し適切に運用できる人材の育成が追いついていません。

総務省がNICT(情報通信研究機構)を通じて「CYDER」(実践的サイバー防御演習)や「SecHack365」といった育成プログラムを推進していることは素晴らしいと思います。でも、それでもまだ圧倒的に人材が不足している状況です。

新社会人の皆さんには、ぜひセキュリティ分野にも興味を持ってもらいたいです。技術的に挑戦的で、社会的意義も高く、需要も非常に大きい分野です。

デジタル化による社会課題解決の可能性

行政サービスの変化を実感

マイナンバーカードの普及率が2025年2月末時点で78.0%(約9,700万枚)に達したというニュースを見た時、「ようやくここまで来たか」という感慨がありました。私自身、確定申告でe-Taxを使っていますが、紙の書類で手続きしていた頃と比べると、本当に楽になりました。

法人税申告の86.2%、所得税申告の69.3%がe-Taxを利用しているという数字も、デジタル化の浸透を示していると思います。ただし、まだ完全にペーパーレスになったわけではなく、一部の手続きでは依然として紙の書類が必要な場合もあります。

地方でのデジタル活用事例

北海道帯広市のスマート農業の実証事業には、大きな可能性を感じています。2024年度に「帯広市川西農業協同組合(JA帯広かわにし)」が中心となって総務省「令和6年度地域デジタル基盤活用推進事業」の実証事業を活用し、ドローンとAIを組み合わせて作物を管理したり、複数の無人トラクターを同時に動かしたりする実証試験が行われました。人手不足が深刻な農業分野でのデジタル活用は、まさに課題解決の好例だと思います。

私の実家も地方にあるのですが、高齢化が進んで農業の担い手が減っているのを目の当たりにしています。こうした技術が普及すれば、少ない人数でも効率的に農業を続けられるようになるかもしれません。

京都府京丹波町の「京丹波GREEN Pay」のようなデジタル地域通貨も興味深い取り組みです。地域経済の活性化にデジタル技術を活用するという発想は、多くの地方自治体が参考にできると思います。

防災・減災への応用

2024年1月の能登半島地震での教訓を受けた放送ネットワークの強靱化支援は、非常に重要な取り組みだと感じています。災害時にテレビ放送が重要な情報源になることは、私自身も東日本大震災の時に痛感しました。

携帯電話基地局の停電対策強化、移動基地局、無人航空機、低軌道衛星等の活用拡充など、通信ネットワークの強靱化も進んでいます。私たちのようなIT企業も、BCP(事業継続計画)の一環として、これらの動向をしっかりと把握しておく必要があります。

働き方の変化:リモートワークの現実

エンジニアのリモートワーク実態

これは私自身の経験からも言えることですが、エンジニアの働き方に関する調査結果は、現場の実感とよく合っています。「ハイブリッド型勤務」が半数以上、「フルリモート勤務」が約3割という数字は、私の周りのエンジニアの状況ともほぼ一致しています。

私の会社でも、コロナ禍をきっかけにリモートワークを導入しましたが、今ではそれが当たり前になっています。フルリモート勤務の満足度が9割以上という調査結果も納得できます。実際、リモートワークによって通勤時間がなくなり、集中して作業できる環境を整えやすくなったというメンバーが多いです。

出社義務化への抵抗感

フルリモートから出社義務化を経験したエンジニアの約7割が受け身の姿勢を示し、約2割は仕事を続けられないと感じるという調査結果には、正直驚きました。でも、実際に私の知り合いのエンジニアからも似たような話を聞くことがあります。

出社に抵抗を感じる理由として「通勤が負担になる(46.7%)」「リモート勤務の方が生産性が高い/集中できる(45.0%)」「ワークライフバランスが悪化する(35.2%)」が挙げられていますが、これらは本当にその通りだと思います。

私自身、創業当初は「みんなで同じオフィスにいることで一体感が生まれる」と考えていました。でも実際にリモートワークを経験してみると、必ずしもそうではないことが分かりました。大切なのは、働く場所ではなく、いかに効率的に成果を出すかということです。

柔軟な勤務形態の重要性

エンジニアが出社を受け入れられる条件として「出社日が柔軟に選べる(ハイブリッド型勤務)」が49.3%で最も多いという結果は、現場の感覚とも合っています。私の会社でも、完全にリモートにするのではなく、必要に応じて出社できるハイブリッド型を採用しています。

「出社は短期・一時的」(39.5%)、「勤務時間の自由度(フレックスタイム制や短時間勤務など)」(36.7%)という条件も理解できます。プロジェクトの状況やチームの連携が必要な時だけ出社して、普段は各自が最も生産性の高い環境で働く。これが理想的な働き方だと思います。

産業・市場の変化と課題

クラウドサービス市場の拡大

世界のパブリッククラウドサービスの売上高が2024年に7,733億ドルに増加したという数字を見ると、この市場の巨大さと成長力を改めて実感します。Amazon、Microsoft、Googleが大きなシェアを占めているのは、私たちのような企業でも実感するところです。

私の会社でも、これらのクラウドサービスを活用していますが、その便利さと同時に、海外事業者への依存という課題も感じています。データの保存場所や管理方法について、経営判断として慎重に検討する必要があります。

国内市場の課題と可能性

国内のAIOps/運用自動化市場が2024年度に20%弱の成長を見込んでいるという予測は、運用効率化への需要の高まりを示していると思います。私たちのような中小企業でも、人手不足を補うために自動化への投資を検討しています。

ただし、日本のデジタル分野の国際競争力が低いという課題は深刻です。デジタル関連サービスの国際収支の赤字拡大は、国全体として取り組むべき問題だと感じています。

ITreviewによる製品評価の重要性

「ITreview Grid Award 2025 Summer」で約1,230製品・サービスが評価されたというニュースは、IT選定の参考になります。私たちが新しいツールやサービスを導入する際も、実際のユーザーレビューを重視しています。

特にB2B向けのIT製品は、実際に使ってみないと分からない部分が多いです。ユーザーのリアルな声が集約されているプラットフォームは、本当に価値があると思います。

NTTグループの多岐にわたる取り組み

NTTグループの取り組みを見ていると、単なる通信事業者を超えて、社会課題解決に幅広く貢献していることが分かります。

新潟大学との遠隔触診技術の共同研究は、医師不足・偏在という地域課題の解決に直結する取り組みです。私の実家がある地方でも、専門医不足は深刻な問題になっています。こうした技術が実用化されれば、多くの人が助かると思います。

鋼材を使用したインフラ施設の画像から腐食の進行を予測する技術も、保全コスト削減に大きく貢献するでしょう。日本のインフラの老朽化は深刻な問題ですから、AIを活用した効率的な保守管理は必要不可欠です。

生物多様性ビッグデータを運営する株式会社バイオームへの出資や、衛星画像データによる植生および生物の広域推定技術の開発など、環境分野への取り組みも印象的です。企業活動と環境保護の両立は、これからの時代に不可欠な視点だと思います。

2025年大阪・関西万博への期待

NTTパビリオンの取り組みや、「つながるっ展」のようなイベントを見ていると、万博への期待が高まります。私も実際に万博会場を訪れる予定ですが、最新のデジタル技術が一堂に会する貴重な機会だと思っています。

万博は単なるイベントではなく、日本の技術力を世界に示すチャンスでもあります。特にデジタル分野での競争力向上のきっかけになればと期待しています。

新社会人へのメッセージ

これまで長々とお話ししてきましたが、新社会人の皆さんに伝えたいことは、「変化を恐れずに、積極的に新しい技術に触れてほしい」ということです。

私が社会人になった頃と比べて、今は本当に多くの可能性が開かれています。AIや量子コンピューター、Web3など、SF映画の中でしか見たことがなかった技術が現実のものになっています。

一方で、サイバーセキュリティのような課題も深刻化しています。でも、これらの課題があるからこそ、皆さんのような若い世代の力が必要なんです。

具体的なアドバイス

  1. 継続的な学習を心がけてください
    技術の進歩は早く、大学で学んだことがすぐに古くなってしまうこともあります。でも、基礎的な考え方や問題解決のアプローチは変わりません。常に新しいことを学ぶ姿勢を持ち続けてください。
  2. 失敗を恐れないでください
    私も起業してから多くの失敗をしました。でも、その失敗があったからこそ、今の会社があります。特にIT分野では、失敗から学べることがたくさんあります。
  3. 人とのつながりを大切にしてください
    リモートワークが普及して、直接会う機会は減りましたが、人とのつながりの重要性は変わりません。同僚や先輩、業界の人たちとの関係を大切にしてください。
  4. 社会課題に関心を持ってください
    デジタル技術は手段であって、目的ではありません。その技術を使って何を解決したいのか、社会にどう貢献したいのかを考えてみてください。

おわりに

2025年のデジタル社会は、まさに激動の時代です。AI、量子コンピューター、Web3といった技術革新がある一方で、サイバーセキュリティや人材不足といった課題もあります。

でも、こうした変化の時代だからこそ、新しいアイデアや若い力が求められています。皆さんには、既成概念にとらわれることなく、自由な発想でこの変化に立ち向かってほしいと思います。

私自身、まだまだ学ぶことがたくさんありますが、これからも現場の視点を大切にしながら、日本のデジタル社会の発展に貢献していきたいと考えています。

新社会人の皆さんの活躍を心から応援しています。一緒にこの変化の波を乗り越えて、より良いデジタル社会を築いていきましょう。


佐々木 優

参考資料・出典

主要な出典元

技術・法制度関連

サービス・製品情報

農業・地方創生関連

セキュリティ・法制度関連

政府・行政関連

本記事は現在入手可能な公開情報に基づいて作成されており、各種データや事実については上記の信頼できる情報源から引用しています。技術の進歩は日々続いているため、最新の情報については各公式サイトをご確認ください。